われわれ消費者は、わりに気軽に粉せっけんの香料は不必要で、有害かもしれないから抜いてくれと、せっけんメーカーにたのんだりしますが、これがメーカーにとっては大問題なのだということを、つい最近まで知りませんでした。
せっけんの原料は天然の油脂ですが、その油脂の種類や配合の割合などは、せっけんの性質を決める重要な要素であって、それぞれのメーカーの独得のものです。
天然の油脂というものは、常に一定の性質を持っているとは限らず、その原料の生物の状態などによっても少しずつの差がでてきます。原料の油脂の差は、香料さえ添加すれば大した問題ではなく、いつも同じ匂いのせっけんが作れます。しかし香料を使わないとなると、いつも原料の油脂を厳重の上にも厳重に管理しなくてはなりません。従って天ぷら廃油からは商品価値のあるせっけんは作りにくい(香料不使用の場合)そうです。われわれのグループに協力してくれるメーカーは、始めのころ、香料を抜かせるなんて、そんな無茶なことをと思ったそうです。メーカーとしては香料を使うのは常識でどんな香料が消費者にうけるかということが研究課題だったといいます。
生産者に無理強いして、色いろ安全なものを作ってもらう時、少しぐらいの欠点には目をつぶる必要がある時も出てくるでしょう。このことは、食べ物の場合にもそっくりあてはまるだろうと思います。
香料は、厚生省関係の洗浄剤(化粧石けん、浴用石けん、シャンプー・リンスなど)に関しては、指定成分ということで表示しなくてはなりません。つまりアレルギーを起こす原因になる恐れのある物質(百数十種)の内に含まれています。指定成分はどんなに微量でも表示義務があります。しかし、おかしなことに界面活性剤の成分表示は要りません。
洗濯石けん(通産省関係)は界面活性剤の成分表示は必要ですが、指定成分はありません。ただし、2000年4月からは、両省関係とも全成分の表示が義務づけられるようです。
香料といえば、女子高生などが《朝シャン》をする理由に、匂いの問題があるようです。あの合成洗剤シャンプーの強烈な匂いを良い匂いとしていて、石けんシャンプーで洗った子の髪の毛を臭いと言うそうです。石けんシャンプーにも香料が入っていて、洗っているときはいい匂いがしますが、天然香料が多くて匂いに持続性がないため、匂わない髪の毛は臭いと言っていじめられるそうです。いずれにしても香料・特に合成洗剤の匂いは、私なんかスーパーの洗剤売り場には近づきたくないほどの臭さです。あれが良い匂いという感覚にはついていけません。合成洗剤メーカーの宣伝文句『白さと香り』の「白さ」は、蛍光増白剤の不気味な白さで、「香り」は石油系合成香料の強烈な臭さなのです。
※このコーナーでは、石川貞二さんの文章をそのまま掲載しています。当「石鹸百科」とは異なる見解が含まれていることがあります。