硬度が増すと、石けんの泡立ちが悪くなることが知られている。 その影響を調べたのが、上図の実験である。縦軸は不溶性の沈殿生成量で、この値が硬度とともに増加すれば溶けにくいことを示す。
無リン洗剤では、カルシウム硬度が0の時に、すでに沈殿生成量が300ppmの値を示しているが、これはゼオライトとCMCという物質が入っているためで、この沈殿生成量は、泡立ちが悪いとか溶けにくいとかには関係しない。 この場合、最初から沈殿生成量が高いが、カルシウム硬度が増えてもあまり変化しない。つまり、無リン洗剤は、カルシウム硬度の影響を殆ど受けない。
有リン洗剤も、カルシウム硬度が0の時、120から130ppmの沈殿生成量を示している。CMCによるものである。有リン洗剤は、カルシウム硬度が100ppm以上で、硬度の影響を少し受ける。
粉石けんは、カルシウム硬度が50ppm以下なら、沈殿生成量は0。その後、硬度とともに沈殿生成量は増加する。 しかし、硬度100ppmの近辺での影響はさほど大きくはない。
〈中西準子対談シリーズ(1) 小島貞男さん〉「日本の水道はよくなりますか」(亜紀書房)p.63 より