合成洗剤が毒であるということは、おもに主婦の間から言われ始めました。柳澤博士たちの初めての警告の頃から、次第に広く使われ出した合成洗剤が、主婦湿シンと呼ばれる手荒れの原因であることに、主婦たちが気づきだしたのです。
主婦の仕事が楽になるはずの、科学が生んだ奇跡の洗浄剤──合成洗剤が、主婦の手荒れや、乳幼児のおしめかぶれの原因だったのです。それにもかかわらず、合成洗剤の生産は、年を追って急増し、1960年にはすでにせっけんの生産を追いこし、洗たく機の普及とともに、驚異的成長を続けていくのです。1970年代には、もはやせっけんの入手は、困難になってしまった位です。
これについて合成洗剤メーカーは、消費者が合成洗剤のメリットを認識して、せっけんより合成洗剤を選んだ結果だと自賛しています。しかし決してそうではありません。石油コンビナートから出てくるカスみたいなものを原料にして作られる合成洗剤が、ものすごくもうかるものだから、なりふりかまわず、朝から晩まで「白くなる。白くなる」とテレビで宣伝し、主婦をだまし続けた結果にすぎません。
せっけんを見直そうという動きは、川崎市の工場で働いている工員さんたちの家庭から始まったといわれます。合成洗剤では落ちなかった作業服の油よごれが、せっけんできれいに落ちることに気づいたのです。同じことが、私の住んでいる漁村でもおこっています。
※このコーナーでは、石川貞二さんの文章をそのまま掲載しています。当「石鹸百科」とは異なる見解が含まれていることがあります。