私はウニ卵の発生を利用して、合成洗剤の急性毒性を調べてきましたが、人は魚とちがって鰓がないから、魚の実験は意味がないなどという人たちにとって、ウニの卵などは、もっと無意味だとしか思えないのでしょう。特に歯みがき剤の中の高級アルコール系合成洗剤に関して、ウニで実験した結果などは、「ウニは歯をみがかない」の一言で無視されてしまいます。
ウニは海水中で発生します。人は羊水の中で発生します。人も受精から卵割、桑実期など最初はウニとほとんど同じ経過で発生を続け、さらに魚のように、尻尾や鰓のある時期を経過します。妊娠中のネズミの背中に合成洗剤をぬると、羊水中に洗剤が検出されるという報告もあります。海水中で発生するウニと、羊水中で発生するヒトと、どれだけちがうというのでしょう。歯みがき剤中に2%も含まれている合成洗剤は、台所では0.1%以下で使うように厚生省が規制しているASです。何と20倍です。手からと、口の粘膜からとでは、どちらか浸みこみやすいでしょう。どう考えても口の方です。しかもこのASは、20回うがいしてもまだ口の中に残っています。
合成洗剤を使っていない歯みがき剤でも、しょせん研磨剤を化学薬品でねり合わせたものであり、歯をすりへらすだけで、歯のためには決して良くありません。何もつけないで、歯ブラシだけで掃除するか、ニガリの含まれている粗塩を使うことをおすすめします。
歯磨き剤については、1979年島本虎三代議士が合成洗剤の安全性に関して質問趣意書を提出した中に含まれていて、政府の答弁として「歯磨き剤は口に入ってから3分位で全部排出される一過性のものだから、影響はない」と言っています。
20回うがいをしても口に残るということを実験したのは、鳥羽市内のある小学校の先生で、子どもに家で使っている歯磨き剤を持ってこさせ、歯を磨いた後のうがい水にどのくらい合成洗剤が残るか調べました。
メチレンブルー法という非常に簡単でしかも正確な方法(陰イオン系合成洗剤の測定法。クロルホルムを使うのであまり一般的ではない)でうがい水を検査したところ、子どもがもう口が痛くなったから勘弁してと言い出した20回目のうがい水からも、合成洗剤が検出されたのです。何が一過性ですか!
現在、味覚の無くなった人が増えてきて、その原因は食べ物の中の亜鉛が不足しているためと言われていますが、歯磨き剤の中の合成洗剤も原因の一つと言えるでしょう。
水俣病は味覚を失った魚が、有機水銀汚染された海域に棲息していたために汚染され、それを食べた人達が大変な目にあったのです。あれは病気などではなく、チッソという国策会社が犯した殺人傷害事件の被害者なのです。
※このコーナーでは、石川貞二さんの文章をそのまま掲載しています。当「石鹸百科」とは異なる見解が含まれていることがあります。