合成洗剤の皮膚塗布は、器官形成阻害(奇形)を誘発するか、つまり器官形成阻害作用(催奇性)があるかということは大問題です。メーカー側は、厚生省による四大学の合同実験・東京都立衛生研究所・大阪府立衛生研究所・ハンチングトン研究所(英)などの研究で、その安全性は確認されていると言いきっています。
しかし四大学のときは、三重大学の奇形が出たという報告は完全に無視されましたし、ハンチングトン研究所というのは、サリドマイドが安全無害という報告をしたことで有名です。そしてこれらの催奇性を否定する実験は、ぜんぶネズミを使っていることも問題です。サリドマイドはネズミでは、まったく異常は発生しなかったのです。もう一つの問題は、合成洗剤の原料であるLASなどを使った実験であることです。
われわれ消費者が入手できる合成洗剤は、ぜんぶ助剤を配合した商品です。そのことを指摘されたある学者は、ママレモンを使って実験してみたら、親が死んだり胎児が死んだりしたが、奇形は出なかったから安全だと報告しています。
われわれは純粋のLASを入手しにくいと同様に、他の諸々の遺伝毒物からまったく隔離された生活を送ることなど現在では不可能に近いことです。最初のころこの欄で述べた食品添加物の乳化剤、ショ糖脂肪酸エステルとビタミンAの相乗作用のことを思い出してください。四肢の異常が36.6%つまり3匹に1匹以上の割で生まれてくるのです。
4大学の合同実験については、別の項(【日本の石けん運動の歴史】毒性の研究)で書いたので、詳しくはそちらを見てください。一言追加すれば、普通に私たちが入手できないLASを使った実験にどんな意味があるのでしょう。お店に行って「小母ちゃん、リニアアルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウムください」なんて言ったって、小母ちゃんはきょとんとしているだけでしょう。でも「ママレモン頂戴」と言えば、すぐに「はいよ」と渡してくれるでしょう。私のやってきたウニの実験でも、原料のLASよりも市販されているママレモンその他の商品の方が、毒性は強いという結果が出ています。
※このコーナーでは、石川貞二さんの文章をそのまま掲載しています。当「石鹸百科」とは異なる見解が含まれていることがあります。