合成洗剤の問題を、原点に戻って考えなおそうということで、これからしばらく連載を引き受けることになりました。
滋賀県が琵琶湖富栄養化防止条例を制定して以来、合成洗剤の問題は、いつの間にか環境の問題にすり変わってしまいました。しかもリンだけが問題にされ、無リン洗剤ならいいという非常に間違った考え方が、全国の自治体にまで拡がってしまいました。
環境問題の中では、合成洗剤はほんの一部にすぎないし、ましてリンのことなど(無視していいとは言いませんが)微々たる問題にすぎません。人口、戦争、原発、農薬等々、地球の環境を云々する時、合成洗剤の占める位置は、相当下の方になるでしょう。
しかし人の健康に及ぼす影響ということになれば、これはむしろ第一番に合成洗剤をもってくるべきであると言っても過言ではないでしょう。合成洗剤は有害ではないと言っている東京大学工学部のある教授でさえ、複合汚染の可能性を全部チェックすることは不可能だと断言していますが、合成洗剤のもっている性質・・・・・・非常にうすい濃度でも、水と油をまぜ合わせる界面活性という性質を失わないということこそ、複合汚染(他の毒物の毒性を強める)の最大の要因なのです。
食べても安全とさえ言われているショ糖脂肪酸エステルが、ヴィタミンAとの複合作用で催奇性(奇形を誘発する性質)を発揮するという報告があります。
一番初めに「健康への影響面では一番」ということで始まりましたが、もともと私は海洋の汚染から合成洗剤に首を突っ込んだので、やはり環境問題の方が大きいと今は思っています。健康問題は所詮人の問題、人が作り出した物で人が被害をうけても、これは自業自得ではないか。人以外の生物に害を与える環境問題の方が、重大だと思っております。それに殆どの農薬は合成洗剤(合成界面活性剤)がなくては使えません。
注)ショ糖脂肪酸エステルは食品添加物として、乳化剤・ガムベースに使用されています。
新潟の河辺広男先生(環境医学研究所)がネズミにビタミンAを筋肉注射し、乳化剤を加えたエサと加えないエサで実験をされましたが、乳化剤を加えたエサを与えるとビタミンAの催奇性が増強されると報告されています。
さよなら合成洗剤「生活全体への問い直しへ」でもこの問題に触れています。
※このコーナーでは、石川貞二さんの文章をそのまま掲載しています。当「石鹸百科」とは異なる見解が含まれていることがあります。