今年の冬、鳥羽市の水道水に海水が混ざるという事故がおきました。始めに、せっけんを使っている人たちが、どうもおかしいといいはじめました。共同購入の世話をしている人のところに、このごろせっけんの質が悪くなったのではないかという問合せがあったりしました。一週間位たつと、コーヒーがまずいという喫茶店からの苦情やら、バスクリンを入れると風呂の水が変な色になるとかいう苦情が出はじめました。水が塩からい、お茶がまずい・・・・・・という苦情は、主に子供から聞かれました。煙草を吸っている男の大人は、最後まで何も感じなかったようです。つまり水道課の人たちは、まわりからの苦情でやっと調査を始めたわけです。この人たちはせっけんを使っていなかったんでしょう。
本当にわかってせっけんを使っている人たちは、一時不便をしのべばまた水道水も元にもどるだろうと別に動ようもしませんでした。たまたま保育所に保育所の検査が入り、食器の油が落ちていないと注意されましたが、そこの保育所長は「合成洗剤で油を落とす位ならまだ油が残っていた方が安心です」といって、ガンとして合成洗剤の使用を拒否してくれました。しかし、現実は、せっけん運動にとって大きなマイナスになり、「こんな不便なものはだめだ」と合成洗剤にもどってしまった人もかなりいました。それでも私はせっけんの新しい効用──水質監視役──が一つふえたと思ってよろこんでいます。
※このコーナーでは、石川貞二さんの文章をそのまま掲載しています。当「石鹸百科」とは異なる見解が含まれていることがあります。