年末の恒例イベント、大掃除。なぜ日本人は大がかりな掃除をするのに寒い年末を選ぶのでしょう? それは、大掃除が正月の神事とつながっているためです。
「すす払い」が原型
正月には、その年の歳神(トシガミ)さまを各家庭に迎えます。門松を立てる、正月飾りを掛ける、鏡餅を供えるなどはすべてそのための準備。
大掃除もそのひとつで、歳神さまを迎えるため家の内外に溜まった1年の汚れを払って清める「すす払い」という行事なのです。
すす払いは毎年12月13日と決まっていて、昔は民家でもその日に大掃除をして家を清めて物忌みをし、年越しの準備を始めました。
現在の一般家庭ではもっと遅くに掃除を始めることも多いのですが、神社仏閣では今でも12月13日にすす払いを行い、その様子は年末の風物詩のひとつにもなっています。
国民の「義務」に
近代になると、「行事」であった大掃除に「法律」が絡んできます。
明治33年(1900年)には掃除に関するはじめての法律「汚物掃除法」制定され、昭和29年(1954年)には「清掃法」が定められます。
この「清掃法」には「建物の占有者は、毎年1回、市町村長の定める計画に従って、大掃除を行わなければならない」とあります。集落ごとに大掃除検査の日が定められ、役場の職員が家々を回って検査し、合格した家には「大掃除検査済之証」を貼って回りました。
昭和45年(1970年)には「清掃法」が全面改正された「廃棄物処理法」が制定。
建物の占有者は、建物を清潔に保つこと、市町村長の計画により大掃除を行うことが義務づけられました。この法律に罰則はありません。また、「年に1回は必ず大掃除」という決まりもなくなりました。
衛生思想が普及した今日では、市町村の職員が一般家庭の大掃除を指導したり検査したりすることはなくなりました。大掃除検査を行う自治体も今ではほとんどありません。
参考資料:
「清潔な暮らしの科学(生活編)」花王生活科学研究所
「田鶴浜町町史」石川県田鶴浜町