昔は植物の灰で洗っていた
純粋なアルカリ剤がなかった昔は、陸海に生える植物の灰が洗浄に使われていました。
植物の灰にはアルカリである炭酸カリウムや炭酸ナトリウムが豊富に含まれています。それを水に浸すと、その上澄みは灰汁(あく)と呼ばれる強いアルカリ性の溶液になるからです。
ちなみに石鹸の「鹸」には「あく」という読み方もあります。
旧約聖書の記述にも
アルカリは汚れの中の油分と反応して一種の石鹸になり、それが汚れ落としに役立ちます。このように便利な作用がある灰汁は、洗剤や漂白剤として古くから使われてきました。染色用の薬剤として役立つ事もありました。
旧約聖書には「石鹸」についての記述がありますが、これも、実は灰汁=アルカリ水溶液であったと考えられています。
生まれはナイル川流域?
原始的な石鹸は、ナイル川沿いの「肥沃な三日月地帯」に発生した古代エジプト文明(紀元前約2300年)のころに偶然生み出されました。
獣を丸焼きにするとき、薪が燃え尽きた灰に獣脂がしたたり落ちます。それが鹸化反応を起こしたと考えられています。
石鹸は平たく言うと「油脂を強アルカリで煮たもの」です。この場合は熱々の灰が「アルカリで煮る」役目を果たしたわけです。
2022年2月改訂(2009年11月初出)