純粋な石鹸分を取り出す工程
塩析とは、鹸化反応が終わってできた石鹸の素に食塩(NaCl 塩化ナトリウム)を加え、純粋な石鹸分だけを取り出す工程のことです。水酸化ナトリウムを使って作る固形石鹸(ナトリウム石鹸)に用いられます。
鹸化塩析法
固形石鹸は、原料油脂に水酸化ナトリウムを混ぜて加熱し、油脂を石鹸に変えてゆきます(鹸化)。鹸化が終わった石鹸の素を石鹸膠(せっけんにかわ)と呼び、これに大量の食塩を加えて塩析して純粋な石鹸分を析出(※)させて取り出します。
この製造法を「鹸化塩析法」といいます。純石鹸分98%以上という純度の高い石鹸を作ることができます。
※液体状の物質に溶けている成分が固体となって出てくる現象。
食塩で「純粋な石鹸」が得られる訳
石鹸膠に食塩を加えると、なぜ純粋な石鹸分だけが出てくるのでしょうか。
カギは「水分子」
石鹸が水に溶けるとき、石鹸は水分子を服のように身にまとうことで水になじんで溶け込みます。
食塩は水に溶けるとナトリウムイオン(Na+)と塩化物イオン(Cl–)に分かれます。これらのイオンも同じように水分子を身にまとって水に溶け込みます。
食塩が石鹸の水分子を奪う
石鹸の溶けている水に食塩を入れると、食塩は余っている水分子を捉まえて水に溶けてゆきます。しかし、食塩の量が増えてくると水分子が足りなくなってきます。
そうなると、食塩は同じ水に溶け込んでいる石鹸が持っている水分子を奪い始めます。
ナトリウム石鹸は食塩よりも水分子を引きつける力が弱い性質があります。従って塩が増えれば増えるほど水分子を奪われるナトリウム石鹸も増えてゆきます。
水分子を奪われ石鹸が析出
水分子を奪われた石鹸は、もう水に溶けていられません。結果、固体となって出てきます。(析出)
こうして全ての石鹸の水分が塩によって奪われると、その石鹸膠に含まれている純粋な石鹸分が全て個体となって出てくる訳です。
この塩析を何度も行って不純物を徹底して取り除き、純度の高い石鹸を作ります。
ココナッツ石鹸は例外
例外なのは、ココナッツ石鹸です。ココナッツとはヤシのことですが、このオイルで作られた石鹸は水分子を引きつける力が強く、塩析しても容易に出てきません。
ですから、固形のココナッツ石鹸を作るときは塩析をしない「冷製法」で作られます。