酵素の種類

基質や生成物による分類

どのような基質に働きかけ、どのような物質を作りだすかによって酵素を分類すると、大きく以下のように分けられます。

デンプン分解酵素

デンプンを糖に分解する消化酵素。α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、プルラナーゼなどが代表的。膵液(すいえき)や唾液に含まれ、胃腸薬としても利用される。ダイコンやヤマイモにも多く含まれ、「タカヂアスターゼ」を開発した高峰譲吉は「おろし餅(餅の大根おろし和え)」から開発のヒントを得たという。

糖質関連酵素

ある種類の糖を別の種類の糖に変化させる反応を触媒する。乳糖をグルコースとガラクトースに分解するラクターゼや、砂糖をブドウ糖と果糖に分解するβ-フラクトフラノシダーゼなどがある。ラクターゼは乳糖不耐性症の治療に利用され、β-フラクトフラノシダーゼはフラクトオリゴ糖の生成に使われている。

タンパク質関連酵素

一般的に、プロテアーゼと呼ばれる酵素。パイナップルから得られるブロメライン、人の胃液にも含まれるペプシンや膵臓に含まれるトリプシンのほか、子牛や子羊の第4胃に存在し、チーズ製造に利用されるキモシンなどがある。アルカリ耐性を高めたアルカリプロテアーゼは洗剤にも使用される。

アミノ酸関連酵素

さまざまなアミノ酸の製造に関わる酵素。合成甘味料であるアスパルテームの製造や、各種うま味調味料作りに使われている。

脂質関連酵素

脂肪を分解するリパーゼは、人を含む動物では膵液や腸壁、肝臓などに存在するほか、植物の種子やカビ、細菌などにも含まれている。油脂や乳製品の加工、消化薬、臨床検査薬などに利用される。洗浄剤へ配合すると油汚れの除去に効果がある。

セルラーゼ

天然の高分子化合物であるセルロースの結合を切る酵素。セルロースを分解して糖に変え、木材からバイオエタノールを作る研究にも役立っている。洗剤にもよく配合され、Gパンの洗い加工(バイオウォッシュ)にも使われる。

上記のほかに、核酸に関する酵素や、医療分野での臨床分析に利用される酵素、化学品の合成に関わる酵素や殺菌漂白に役立つ酵素などがあります。

酵素反応の種類による分類

触媒する反応の種類によって酵素を区別すると、以下のようになります。

酸化還元酵素

オキシドレダクターゼともいう。その酵素が働きかける物質(基質)の酸化還元反応を触媒する。酸化とは、ある物質が「電子(e)を失う」「酸素(O)を得る」「水素(H)を失う」のいずれかの反応のことを指す。逆に「電子を得る」「酸素を失う」「水素を得る」ときの反応は還元と呼ぶ。

転移酵素

トランスフェラーゼともいう。基質の分子内の官能基を、ほかの基質の分子に移す反応を触媒する。血液検査などに利用される。官能基とは、ある化合物の分子の基本構造に結合し、その化合物に特定の性質をもたらす原子の集まりのこと。

加水分解酵素

ヒドロラーゼともいう。基質の加水分解を触媒する。加水分解とは、ある化学物質に水が反応してその物質が分解されるプロセスのこと。たとえばグルコアミラーゼという酵素はアミロースに水分子(H2O)を与えてグルコースに分解する。

除去付加酵素

脱離酵素、リアーゼともいう。基質の分子から一部の原子団(いくつかの原子が集まったもの)を切り離して二重結合を作ったり、逆に、新たな原子団を基質の二重結合部分に割り込ませたりする反応を触媒する。

異性化酵素

イソメラーゼともいう。基質の構造内にある官能基を、その分子内で移動させて異性体を作る反応を触媒する。異性体とは、分子構造内にある原子の数や種類は同じだが、そのつながり方が違う分子同士のこと。

リガーゼ

ATP(アデノシン三リン酸)などが持つピロリン酸基の高エネルギー結合を分解するときに発生するエネルギーによって起こるさまざまな反応を触媒する。日本語名は「合成酵素」。ただし、この日本語名には除去付加酵素(リアーゼ)の一部も含まれる。

参考資料:『酵素の生産と利用技術の系統化』中森茂

2012年12月初出

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