酵素には以下のような特徴があります。
酵素は試験管の中でも反応を起こせる
酵素は生き物の体の中で作られますが、酵素そのものは命を持っていない「タンパク質」です。そのため、生き物の体内から酵素だけを取りだして試験管に入れても、温度などの条件さえ整えば体内に存在していたときと同じ反応(酵素反応)を起こすことができます。
また、酵素は物理化学的な手段で精製したり、結晶化したりすることもできます。これは産業に利用するときにとても便利な性質です。
酵素は穏やかな条件が好き
多くの酵素が好む活動条件は、常温(20~60℃)、常圧(ほぼ一気圧)、中性(pH7付近)です。これは酵素が生き物の体内で働くようにできているためとされます。
穏やかな条件で反応を起こせる性質は、省エネルギーにつながります。たとえばデンプンを酵素なしで糖に分解しようとすると、高温で長時間熱したり強い酸を使ったりしなくてはならず、エネルギー消費が増えます。それが、デンプン分解酵素を使うと、ただ混ぜておくだけで分解が進みます。
ただし、耐熱酵素、好冷酵素、好アルカリ酵素、好酸性酵素など、極端な環境を好む酵素もたくさんあります。この類の酵素は、厳しい環境でも利用できる酵素として産業用などに重宝されます。
酵素は反応する相手を選ぶ(基質特異性)
酵素と基質の関係は、カギとカギ穴の関係にたとえることができます。ひとつのカギ穴にはひとつのカギしか合わないように、それぞれの酵素はそれぞれ決まった物質としか反応しません。アミラーゼが分解するのはデンプンだけ、プロテアーゼが分解するのはタンパク質だけです。
このように酵素が反応する物質のことを基質(きしつ)と呼び、酵素が決まった基質としか反応しない性質のことを基質特異性(きしつとくいせい)と呼びます。
酵素を製品作りや実験などに応用するとき、この基質特異性が大いに役立ちます。いろいろな物質がごちゃ混ぜになった中でも、酵素は自分がターゲットとする基質を的確に見つけ出して反応を起こすことができるためです。
補欠分子や補酵素を必要とする場合がある
酵素が活発に働くため、あるいは酵素が酵素としての形を保つため、特定の物質を必要とする場合があります。その特定の物質は「補酵素」や「補欠分子」と呼ばれます。
補酵素の代表的なものにはビタミン類などが挙げられます。一方、補欠分子の代表的なものには金属イオンなどがあります。