富栄養化とは?
「富栄養化(ふえいようか)」とは、湖沼や湾などの水域で窒素やリンなどの「栄養塩類」が多くなることです。 (有機物によって水が汚れる「有機汚濁」とは異なります。)
もともと「富栄養化」というのは、生まれたばかりの湖に、だんだんに栄養塩類が増えていき、植物が繁殖し、湖が沼となってやがて消滅していく、という自然現象なのですが、近年問題になっている「富栄養化」は、その原因が生活廃水や工業排水、農業廃水などの人為的なものであり、かつ急速に進んでいる点が問題とされています。
栄養が増えるのだから、良いことのように思われるかもしれませんが、ここで「栄養」というのは、植物性プランクトンの成長のための栄養分を指しています。
窒素やリンが急速に増えると植物性プランクトンが急速に増えて生態系のバランスを崩し、見た目にも汚くなって悪臭を発したり、魚などの他の生物にも影響を与えるため、良いことではないのです。
合成洗剤の無リン化
かつて、洗濯用合成洗剤には、助剤としてリン酸塩が配合されていました。1977年以後、琵琶湖で赤潮が発生して、富栄養化が深刻な問題となりました。
富栄養化の原因物質である窒素・リンの排出を減らすため、1979年に滋賀県で「琵琶湖富栄養化防止条例」が制定され、工場排水中の窒素・リンの排出規制と合わせて、リンを含む合成洗剤を、滋賀県内で使用・販売・贈与することが禁止されました。このことは、滋賀県だけでなく全国的に大きな波紋を投げかけました。
洗剤メーカーはすぐに無リン洗剤を発売し、現在の日本では、家庭用洗剤はほとんど全て、リン酸塩を含まない無リン洗剤になっています。(ただし、業務用洗剤にはリン酸塩を含むものが今でも使用されています。)
最近の合成洗剤と富栄養化
このように、助剤として使われていたリン酸塩は使われなくなったのですが、最近の合成洗剤の中には、界面活性剤の中に窒素やリンなどを含むものが増えてきています。
例えば、ボディソープやシャンプーの中には、リンを含むアルキルリン酸塩や、窒素を含むアミノ酸系、ベタイン系の界面活性剤を主成分にしているものがあります。
また、台所用洗剤には、窒素を含むアルキルアミンオキシドや脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸メチルグルカミドなどが使われているものが増えてきています。
窒素やリンは、現在の下水処理では十分に取り除くことができず、放流されてしまいます。台所洗剤やシャンプーに含まれる窒素やリンは、かつての洗濯用洗剤に含まれていたリンと比べると、量的にはずっと少なく、ただちに富栄養化を起こすとは言えませんが、窒素やリンを含む洗剤が増えてきているのだということは知っておきたいことだと思います。