図1・1・17は単一の脂肪酸で作った石けんの溶解度を示したものですが、パルミチン酸石けんやステアリン酸石けんは70℃ぐらいの高い温度でないと溶けません。石けんが溶けなければ泡も立ちませんし洗浄力も発揮しません。また、ラウリン酸石けんのように分子量が比較的小さい石けんでも40℃ぐらいでないと石けんとしては十分な働きを表さないのです。これに対しオレイン酸石けんは常温でも溶けやすいので低い温度でも十分に石けんとしての能力を表します。
「洗う その文化と石けん・洗剤」(藤井徹也著・幸書房)p.36より
各脂肪酸ソーダ塩の水に対する溶解度を図(上記と同じ図です)に示した。石けんはその溶解温度以上において、その最高洗浄力を発揮するものである。また、家庭での各種洗浄の際の洗液の温度は20~40℃範囲内が通常である。図によればこの範囲内にある脂肪酸ソーダ塩としては、ミリスチン酸ソーダ塩、ラウリン酸ソーダ塩、オレイン酸ソーダ塩などがあげられる。 しかし、われわれが実際に使用する石けん原料はこれらの単体の脂肪酸ではなく、各種の脂肪酸が混在している油脂または混合脂肪酸である。単体脂肪酸を分別して使用することは、単に経済上の不利だけでなく、多種の脂肪酸を配合して平均的な特性をつくり出したほうが洗浄力で勝ることが実証されている。
したがって、各油脂を原料とする場合、その脂肪酸組成を知ることが最も大切である。
「洗浄と洗剤」(辻薦著・地人書館)p.54より
2009年11月改訂