酵素(Enzyme)とは、生物の体内で作られるタンパク質です。触媒(しょくばい)機能を持ち、動植物や微生物などすべての生物の体内に存在します。触媒とは、特定の化学反応をスピードアップさせる物質で、それ自身は反応の前後で変化しないものを指します。
酵素反応
生物は体の中でさまざまな化学反応を行うことによって命を保っていますが、酵素はその化学反応を確実、スムーズ、スピーディに進める役割を担っています。酵素が触媒すると、通常ならもっと大きなエネルギーが必要になる化学反応が、より小さなエネルギーで起こせるようになるのです。
たとえば、分子内の結合がとても強くて反応が起きにくいAとBという物質を結合させたいとき。通常なら、反応を起こすため高温高圧をかけたり、強酸・強アルカリを使ったり、反応時間を長く取ったりして沢山のエネルギーを使わなければなりません。そこに、たとえばAとBの分子結合を弱める性質を持つ酵素を加えてやると、より少ないエネルギーでよりスピーディーに反応が進むのです。酵素の起こすこのような反応を「酵素反応」と呼びます。
私たち人間の体内には分かっているだけでも数千の酵素が存在しています。たとえば、唾液、胃液、膵液(すいえき)、腸液の中には以下のような酵素が含まれていて、食物をエネルギーに変える手助けをしています。
- 唾液:アミラーゼ(デンプン分解酵素)
- 胃 :ペプシン(タンパク質分解酵素)
- 膵臓:アミラーゼ、マルターゼ(麦芽糖分解酵素)、リパーゼ(脂肪分解酵素)、トリプシン(タンパク質分解酵素)
- 小腸:マルターゼ、ペプチダーゼ(タンパク質分解酵素)
酵素と人との関わり
人間は、酵素に関する詳しい知識がなかった紀元前のころから酵素を生活に利用してきました。パンやチーズ、醤油や納豆などの発酵食品や酒作り、皮なめしや洗濯など、その利用法はさまざまです。
酵素には人間の生活環境と近い穏やかな条件下で活発に働くものが沢山あり、複雑な設備が作れない時代でも利用しやすかったと考えられます。この省エネルギー性は地球環境に負荷をかけないエネルギー作りや製品作りに、今後も大いに役立つと期待されています。