石鹸助剤として使われるアルカリ剤

アルカリ剤は、石鹸の働きを助ける「助剤」としてもよく使われています。

洗濯用粉石鹸には、炭酸ソーダが全体重量の約20~40%配合されます。原材料欄には「炭酸塩」と表示されることが多いのですが、これはほとんどの場合炭酸ソーダのことを指しています。

洗濯用粉石鹸に配合される助剤の役割

洗濯液のアルカリ性を保つ

炭酸ソーダが粉石鹸に「助剤」として配合されるのは、洗濯液が汚れによって酸性に傾くのを防ぐためです。

では、どうして洗濯液が酸性に傾くと良くないのでしょう。

それは、石鹸や多くの合成界面活性剤は陰イオン系(アルカリ性)である為です。アルカリ性の洗剤は、周りが酸性になると中和され、洗浄力が弱くなってしまうのです。

衣類の汚れは大抵が酸性を示します。結果、汚れがひどいほど洗濯液が酸性に傾き易くなります。アルカリ助剤はそれをある程度抑えてくれます。

石鹸カスの発生を抑える

洗濯に使われる水には、大抵の場合カルシウムやマグネシウムなどの金属イオンが含まれています。これらは「硬度成分」と呼ばれます。これらは酸性なので、前述の通り陰イオン系界面活性剤の働きを低下させます。

更に厄介なことに、金属イオンは洗剤と反応して金属石鹸(所謂「石鹸カス」)という別の物質に変えてしまいます。

金属石鹸には洗浄力はありません。よって金属イオンが多い水で洗うと洗剤の洗浄力は落ちます。

石鹸は特にこの金属イオンと反応し易い性質があります。結果的に洗浄力が落ちたり、金属石鹸の白い粉で色の濃い衣類が白く汚れたりしがちです。

炭酸ソーダにはこの金属イオンを捉えてその働きを封じる作用があります。これを「キレート作用」と呼びます。(全ての金属イオンを封じられる訳ではありません)

そうなると水の硬度が下がったのと同じことになります。結果、金属石鹸(石鹸カス)に変わってしまう石鹸が減り、石鹸の洗浄力を効率的に使えるようになります。

その他の効用

炭酸ソーダと粉石鹸が混ざることで、粉石鹸は水と馴染みやすくなります。また、炭酸ソーダには吸湿性があるので、粉石鹸をサラサラに保つのにも役立ちます。

純石鹸(無添剤石鹸)の問題点

無添剤=善、ではない

助剤を含まない粉石鹸は「無添剤石鹸」「純石鹸」と呼ばれます。

一般的には「無添加は安心」とイメージされる場合が多く、洗濯石鹸にもそれが適用される場合が多々あります。

しかしアルカリ助剤などを加えない「無添剤石鹸」だけで洗濯するのは非効率な結果を招くことが殆どです。

アルカリ助剤の力が借りられないので洗濯液は酸性に傾きやすくなり、石鹸カスも発生し易くなります。そうなると、その分を見込んだ多めの石鹸を洗濯の度に消費することになります。その分、環境や家計への負荷は増えます。

アルカリ剤の利点

炭酸ソーダ等のアルカリ助剤は無機化合物です。有機化合物と違い、環境中に放出されたときに生分解の必要がありません。よって一般家庭が洗濯に使う程度の量で環境へ大きく負荷を掛ける恐れは低いと言えます。

また、人体への悪影響についてもそれほど心配は要りません。(不適切に使用した場合を除く)

絹・毛(ウール)洗いにはセスキ炭酸ソーダを

絹・ウールなどアルカリに弱い繊維を手洗いするときには炭酸ソーダは不適切です。pHが高すぎて(アルカリ性が強すぎて)繊維を傷める恐れがあります。

そのような時はセスキ炭酸ソーダを無添剤石鹸に加えると良いでしょう。セスキ炭酸ソーダは炭酸ソーダよりもpHが低い(アルカリ性が強くない)ので素材を傷めにくい為です。

或いは、炭酸ソーダ入り粉石鹸に重曹を加えると全体的なpHが低くなり、無添剤石鹸にセスキ炭酸ソーダを加えたのと同じような状態になる為です。

2022年2月改訂

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