大抵の場合、お湯で洗うと汚れは良く落ちます。40℃程度まではお湯で洗う利点が欠点を上回ります。(ウールなどの例外を除く)
それ以上になると高温による弊害が発生する場合もあります。
しかし、これも洗濯物やその他の諸条件に依ります。例えば丈夫な天然繊維の酷い汚れを落とすのに100℃近くで洗う「煮洗い」はお勧めです。
以下に、お湯で洗濯する時に発生する問題点を挙げます。
再汚染し易くなる
再汚染とは、繊維から洗濯液へと離れていった汚れが再び繊維に戻ってしまう事。
例えば合成繊維は油性汚れと馴染み易く、その傾向は温度が高いほど増す。そのため、水温が高いほど再汚染は進み易い。
泥汚れなどは、温度が高いほど水中で活発に動き回り、繊維に取り付く可能性も高まる。
ビニール系樹脂などは柔らかくなる温度が低い。その為、洗濯に使う程度の温度であっても粘着性が増して洗濯液中の汚れを捉え易くなる。
汚れが繊維の奥に入り込み易い
温度が上がると繊維分子の運動も激しくなる。その結果、繊維表面の油性汚れの一部がより繊維の奥まった部分に入り込み易くなる。
高温により繊維が膨張する事もそれを助ける。
洗剤の働きが悪くなる場合がある
界面活性剤は、高温になりすぎると汚れや繊維に吸着しにくくなる場合がある。また、一部の界面活性剤は高温になると却って水に溶けにくくなり洗浄力が低くなる。
その他の洗剤成分の中には、高温で加水分解して効果を失う物がある。
タンパク質系の汚れが凝固する
血液、生卵、牛乳のような水溶性タンパク質は高温により変性し固まる。その為、洗濯の水温が高すぎると却って落としにくくなる。
洗濯物の生地が傷む
布地の毛羽立ち、毛玉の発生などは高温になるほど発生し易い。
熱可塑性(熱によって変形する性質)を持つ合成繊維や、そのような仕上げ加工を施した生地は高温により損傷を受ける。(例:縮む、強度が落ちる、繊維の一部が剥離する、風合いが悪くなる、修復不可能なシワが付くなど)
羊毛(ウール)などの獣毛製品は高温で洗うと縮んだりフエルト化したりする。フエルト化とは、獣毛繊維が互いに密に絡まり合い、離れなくなった状態の事。
※参考→「ウールのセーターの洗い方」
脱色・変色が起きる事がある
繊維と染料の結合が弱いと、高温になるほど染料が洗濯液へ溶け出し易くなる。その結果、色が褪せたり、他の洗濯物への色移りが発生する。
参考文献:『新版 被服整理学 その実践』(光生社)